AIにおける倫理的問題について

AIにおける倫理的問題について

人工知能、いわゆるAIが、私たちの暮らしの隅々にまで静かに浸透しつつある昨今、その在り方をめぐって「倫理」が問われるようになりました。AIが社会にとって有益な存在であり続けるためには、人間が持つ倫理観をAIに組み込むことが不可欠だと考えられているからです。

しかし、ここで一つの大きな壁に突き当たります。それは、私たち人間自身が、世界でたった一つの統一された倫理観を持っているわけではない、という事実です。

倫理観を形づくるもの

人の数だけ正義がある、と言いますが、倫理観もまた、その土地の風土や文化、人々が大切にしてきた思想や宗教によって、様々にその色合いを変えるものです。

例えば、自動運転車が事故を避けられない状況に陥ったとき、誰の安全を優先すべきか、という問いがあります。歩行者を守るべきか、それとも乗員を守るべきか。個人の権利を重んじる文化と、社会全体の利益を優先する文化とでは、AIに期待する判断が異なるかもしれません。

また、AIの学習データに含まれる偏りも、深刻な問題を引き起こすことがあります。

特定の地域や文化圏で集められたデータだけでAIを育てた場合、そのAIは、異なる文化を持つ人々に対して、意図せず不公平な判断を下してしまう危険性をはらんでいます。それは、ある文化ではごく自然な振る舞いが、別の文化では不適切と見なされることがあるのと似ています。

このように、何をもって「正しい」とするかの基準は、その人が立つ場所によって変わる、いわば相対的なものなのです。

「唯一の正解」を求めることの難しさ

こうした背景を思いますと、全てのAIに共通する「絶対的に正しい倫理」というものを一つに定めるのは、大変難しい相談であると言えるでしょう。ある社会にとっては善とされる行いが、別の社会では悪と見なされる可能性を、常に考えなくてはなりません。

AIの倫理を考えるということは、私たち自身の多様性を改めて見つめ直すことでもあります。唯一の正解を性急に求めるのではなく、それぞれの文化や価値観を尊重し、対話を重ねながら、状況に応じて柔軟に判断できるような仕組みを築いていくこと。そこに、これからのAIと人間が共に歩む道があるのかもしれません。

 

注意:AIの進化は日進月歩のために、これら記事においては情報が古い場合もありますのでご注意ください。